【ミライインタビュー】~第3回 吉田学志さん,まりさん~

「農家の給料は時給に換算すると500円」

あるベテラン農家の言葉だ。

この言葉だけをもって「農業は儲からない」とは言えないものの,決して楽な仕事ではないことがよく分かる。

 

そんな農業の世界に足を踏み入れた吉田学志さん・まりさんご夫婦。

場所は右京区京北黒田。

なぜ,黒田なのか。

人が移動する理由

「京北に関する知識は,名前を知っていたぐらいでした。農業がしたくてここへ移住したのは,研修を受け入れてくれた師匠と出会えたから。」

その理由は単純だった。だが,単純なだけに奥が深い。

人類が移動する原理には様々な例がある。

ホモ・サピエンスがアフリカを出たのは獲物や食物を求めたから。ゲルマン民族が大移動したのは侵略者から逃れるため。そして,現代人が「縁」に導かれるのもそのひとつということだ。

「ここが好きだから移住してきた」という人だけでなく,「縁があったから移住してきた」人もいるという事実は,過疎地への移住促進にもヒントを与えてくれる。

黒田の心意気

黒田の人々について聞いてみた。

「去年の台風で停電したときも,『蝋燭の生活もええもんやろ』って笑っていたぐらい。」

「何かあったら『自分たちで動く』っていう意識が強いんです。倒木を『誰かが何とかし

てくれるのを待っとられへん』って自分たちでどかしたり。」

「そういう意識,受け継いでいきたいです。」

困難な状況で発揮される人々の強さ。そこに暮らしてみなければ分からないことだ。

京北で生きるということ

吉田さんの畑に連れてきてもらった。

「この野菜を,京北はもちろん右京区のみんなが食べてくれたら。近くで作っている野菜が一番新鮮で一番おいしいはず。」

「京北に魅力的なお仕事がもっとあれば,住んで,働いて,食べて,京北だけで生きていけるかも。」

長靴姿のおふたりは,そう夢を語る。

 

さて,黒田の心意気を受け継ぐために避けて通れないのは,少子高齢化のこと。

「子どもが大きくなったときや,自分たちが高齢者になったとき,黒田はどうなっているんだろう。」

そう心配する一方で,吉田さんは静かに言う。

「自分たちを受け入れてくれた師匠のように,将来は農業を志す人を受け入れたい。京北で一緒に生活できる人が増えてくれたら嬉しいな。」

吉田さんも,いつか誰かにとっての大切な「縁」になることだろう。

=終わり=

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この記事を書いた人

うーちゃんきょーちゃん

平成24年1月生まれの双子。
好物は水尾のゆず・京北の納豆もち・宕陰の棚田米。
趣味はスポーツ観戦!ハンナリーズ・サンガが大好き。

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