西院の住宅街の一角に、子どもたちを対象とした文庫を自宅でされている方がいます。コロナが落ち着いてきて、文庫活動が再開されているとのことで伺ってきました。
文庫の名前は「このはな文庫」。玄関にかわいい看板が掲げられていて、呼び鈴を押すと玄関を開けてくれたのが文庫を運営している鈴木美和さん。案内していただいた部屋には絵本や児童書がぎっしり並び、先客の小学生が本を読んでいます。
少しすると、何人かの子どもがやってきました。
鈴木さんは、「今度はこの本はどう?これは前にも借りたかな?」と声を掛けます。どの子がどの本を借りたか把握されているくらい、子どもたちと鈴木さんの距離が近いようです。
鈴木さんが子ども文庫というものを知ったのは、2006年。
幼稚園の先生をしていた鈴木さんは絵本が好きだったこともあり、京都市が募集した絵本ふれあい事業という8か月健診の時に親子に絵本をお勧めするボランティア活動に参加したそうです。
そのメンバーの中に、すでに自宅で子ども文庫を開設している方がいて、子ども文庫や地域文庫というものを初めて鈴木さんは知ったそうです。それからは子ども文庫活動を手伝ったりしながら、お子さんが通っている小学校のPTAで読み聞かせサークルを立ち上げたりして、本に関わる活動を続けていました。
その当時は子育てや家庭のことで忙しかったそうですが、家族の理解を得られて2015年に、念願の子ども文庫を自宅の一室に開設することができたそうです。
鈴木さんとお話ししているうちに、乳児を連れたお母さんもやってきました。お母さんは利用するのは2回目とのこと。近所にお住まいで、通りかかった時に文庫があるのを見つけたそうです。「右京区には区役所の入る建物に図書館もありますが、わざわざ行くのは大変。近所にこうやってくつろげる場所があって助かってます。」と話してくれました。
このはな文庫では本に出てくるおはなしの世界に関連して様々なイベントを開いてきたそうです。この取材の前の週に開催したのは、青い「海のゼリー」をつくるイベント。マメ科の花によりきれいな青色になったゼリーにレモン汁を入れると、あら不思議、鮮やかな紫色に。子どもたちは色の変化を楽しみながら、自分で作ったゼリーをいただきます。
子どもと一緒に来られているお母さんは、ゼリーに入れる砂糖などの準備を手伝っています。これまでもイベントの内容を参加者と一緒に考えるなど、鈴木さんは参加者とともに文庫を運営してきたそうです。
「やっとイベントができるようになってホッとしています。」と鈴木さん。「文庫の活動はコロナでも続けていたんです。子どもたちは、行くところがなくなってしまい本を読む時間が増えたり、本を読むことで不安な気持ちを乗り越えようとしている様子が見えたので、リクエストを聞いて、玄関で受け渡しをしていた時期もありました。」とのこと。
近所の人が利用するからこその近い距離感。学校でも家でもなく、子どもたちが自由にくつろげる場所が身近にある、そんな空間を実現しているこのはな文庫でした。
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