行ってきました!「右京区でアラブうず」 ~右京区でアラブ文化の交流 アラブ諸国の文化や暮らしを知ろう~

2024年 3月 10日(日)、太秦・帷子ノ辻にあるコミュニティスペース「古心庵(ここあん)」で、あるイベントが開かれました。その名も「右京区でアラブうず」。右京区でアラブ文化を知り、交流しようというイベントです。

アラブとは、現在、西アジアから北アフリカの各地に暮らす、アラビア語を話す人々や、彼らの暮らす国々のこと。
いったい、なぜ右京でアラブ?
記者山田が、さっそく取材をしてきました!

右京ファンクラブから活動資金の応援(委員推薦枠)を受けて運営されるこのイベント。
18時半に太秦の「古心庵」を訪れると、すでに30人以上の方がおられました。
年代も子どもやその保護者、高齢の方とさまざま。

当日のポスター

 

会場の「古心庵」(ここあん)(太秦桂ヶ原町20-15)

イベントではまず、アラブ諸国の文化がスライドで紹介されました
教えてくれたのは、シンガーソングライターのYATCH(ヤッチ)さん。
中東の歌を日本語で歌うバンド「ChalChal」のボーカルで、20年以上にわたって、アラブに実際に行って現地と交流されています。

アラブでの体験をお話ししてくれたYATCH(ヤッチ)さん

YATCHさんからは、日本とアラブのつながりや、アラブの人たちの文化や生活のお話がありました。
たとえば、アラブには、人口の半分以上が18歳以下の若者だらけの国があること。偶像崇拝が禁止されているため、幾何学模様の美しい文様が発達したこと。私たちが普段使っている言葉にもアラブに語源があるものがあること(「アルコール」など)。「ナツメヤシ(デーツ)」が日本の梅干しのようにポピュラーであること。日本のアニメが向こうでも人気であること、などなど、現地で暮らす人たちの様子が伝わるお話でした。

なかでも、2003年にはじまったイラク戦争の際の現地のようすは、ニュースだけでは知ることができないお話の数々でした。
今日の来場者と同じくらいの子どもが多く亡くなっていること、生きるために不可欠な浄水場が攻撃されないよう「人間の盾」に外国人たちが参加したこと、「何も役に立てない」と悩むYATCHさんに対して「外国人がいたら攻撃されない気がする、ありがとう」と子どもたちが感謝したこと、戦争の中でも楽器を演奏し「楽しむことをあきらめない人たち」がいたこと・・。

ネットで普及して以前より得やすくなったとはいえ、私たちが知っている情報はごく一部だと痛感する内容でした。
「アラブの人たちと友達になっちゃったら、ほっとけない」というYATCHさんの言葉が印象的でした。

イラク戦争の際の現地の様子を語るYATCHさん

イベントではこの後、YATCHさんをはじめとする演奏者のみなさんが、実際のアラブの楽器をセッションしながら、アラブの民謡を日本語もまじえて演奏。

アラブの民謡を現地の楽器で演奏する皆さん

また、今回の主催者・有島由佳さんも、古代エジプトにルーツを持つ素敵なベリーダンスを披露。来場者の皆さんも飛び入り参加し、にぎやかな舞台になりました。

アラブにルーツがあるベリーダンス

西洋音楽では出せない音をだすこともできるアラブ楽器の独特の音色や、そのリズムに合わせた踊りに直に接することで、太秦にいながらあたかもアラブにいるかのような感覚になりました。

それだけでなく、イベントでは日本の文化「紙芝居」をつかって「アラジンと魔法のランプ」を子供たちに披露。朗読のプロの茶子さんが情感たっぷりに読み聞かせました。

「アラジンと魔法のランプ」を朗読する茶子さん

さらに会場では、アラブ料理の試食コーナーも!

チキンケバブ・ひよこ豆のフムス(ペースト)・ザクロジュース、そしてお話にも出てきた「デーツ」も試食できます。

アラブ料理も振る舞われました!
アラブを見て・聴いて・食べる1日!

 

こうしてアラブを見て・聞いて・食べて、知ることができた夜。
イベント後、主催者「ほっとBelly」代表の有島由佳さんに、あらためてお話を伺いました。

●どうして右京でアラブだったんですか?

「もともと、サンサ右京の体育館を使って、子どもや大人でアラブにルーツを持つベリーダンスのレッスンをしていたんです。そんな時、太秦で大人も子どもも集って楽しめるこの「古心庵」に出会い、古心庵で交流会やクリスマスパーティーをするようになりました。そうしていたら、マスターの徳丸國廣さんから、「古心庵が主催するハロウィンパーティーにも出ない?」とお誘いいただいて、地域の方々にダンスを見ていただく機会が生まれたんです。今日出演したYATCHさんからも以前からアラブの音楽を教わっていて、今回YATCHさんが京都に来るタイミングで、アラブのことを伝えるイベントをしたいな、と思って企画しました。ベリーダンスを習ってくれているみなさんにも、そのバックグラウンドであるアラブのことを知ってほしいな、という思いもありましたね」。

●今日実際に開催してどうでしたか?

「はじめてのイベントでドキドキでしたが、アラブ好きの人が集まって楽しかったです。子どもたちも、明日からテレビのニュースにアラブが出てきたら、「あそこには今日話を聞いた人たちが暮らしてるんだな」、といままでと違った見方になったり、視野を広げる機会になったりしていれば嬉しいですね」

アラブの様子を歌と共に伝えてくれたYATCHさんにもお話を伺いました。

●今日はいかがでしたか?

「音楽と紙芝居で、大人も子供も楽しめる企画にできました。短い時間で、今日のように多角的・多面的にアラブのことを伝えられる機会はあまりないなと思います。ニュースを通してみるアラブはどうしても一面的で、もったいないなと思っています。私が直接見たことを伝えることで、日本とアラブの地域を直接つなげられていれば嬉しいです」

「いまはネットを通じ以前よりも簡単にアラブを知ることもできて、便利になりました。でも、直接人と人とが会って、生で音を感じ、互いに伝え合うことにはかなわないと思います。子どもたちには、今日のことは全部がわからなくても、大人が一生懸命何かを伝えようとしている姿を見るだけでも意味があるのではないでしょうか。そうした場を提供してくれた、右京ファンクラブや古心庵の皆さんに感謝したいです」。

●最後に、有島さんに、右京ファンクラブに協賛しているみなさんへのメッセージを伺いました!

「ファンクラブの皆さまから応援いただいた活動資金のおかげで、YATCHさんはじめアラブ音楽演奏者の皆さんや照明・音響スタッフの方々にご協力いただけたり、紙芝居やフライヤーを制作・印刷できたり、地域の皆さんが集える会場を借りることができました。子どもたちにアラブ料理を体験してもらうための材料も購入することができました。皆さまのおかげで、右京の子どもたちが海外に目を向け、文化交流をするきっかけになる機会をつくることができました。本当にありがとうございました」

●レポーター感想

ニュースを通して少ししか知らなかったアラブの雰囲気を、五感で感じる機会でした。現地でも一人一人の人間が生きていることが伝わるお話でした。子どもたちだけでなく、大人の視野も広げてくれる貴重な機会だったと思います!

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この記事を書いた人

山田 大地

1988年生まれ、立命館大学大学院社会学研究科修了。修士(社会学)。京北での産学民連携プロジェクトを経て、右京区まちづくりコンシェルジュ(〜2019)。立命館大学政策科学部非常勤講師(2016年〜2020)、大谷大学 地域連携アドバイザー(2019〜2021)。現在、京都市まちづくりアドバイザー。