「右京ファンクラブ」の「右京 M-1(まちづくりワン)グランプリ」受賞者レポート。
今回は優秀賞を獲得された「嵯峨自治会連合会」を取材いたしました。
「ドアしまります」「ごくろうさま」ありがとう」「お気をつけて」
8人で後部座席がいっぱいになる乗合タクシー。知り合いの車に迎えに来てもらったかのように乗り込む人たち。観光シーズンど真ん中の嵐山で、ここだけにアットホームな日常生活が流れている。
観光客と人力車が行きかう嵐山の長辻通は、土日祝日の日中に北行き一方通行の交通規制がかかります。オンシーズンの秋ともなれば、この交通規制がなんと平日にも拡大。「観光客の利便はもちろん大事。しかし、住民にとってたいへん不便なのも事実です」と、嵯峨自治会連合会の村上会長(74)。
「病院に行くにも買い物に行くにも、いつもの一番近い停留所からはバスに乗れず、2つも3つも遠い停留所まで歩かなければなりません。20年近くこの秋の交通規制が行われてきましたが、昨年住民アンケートを実施したら、今まで黙って我慢していた人たちの本音が一気に表に出てきました。それを聞いたからには、何の対策もないまま交通規制を続けることはできません」。
そこで立ちあがったのが、嵯峨自治会連合会と嵐山保勝会、嵐山商店街。地域住民と地元の商店、企業がタッグを組み、地域住民専用の乗合タクシーの運行を実現しました。

昨年の春から動き出し、右京区や交通局にも協力を仰ぎ、8月には運航コースも決定。停留所の看板も時刻表も、乗車証も、すべて手づくり。
乗合タクシーの運行は、地元企業「株式会社キャビック」に車両と運転を依頼。京都市の補助金に加え、嵐山保勝会や嵐山商店街の支援によって費用をまかない、住民の負担なく運行を実現しました。
自治会連合会、嵐山保勝会、嵐山商店街のメンバーがシフトを組み、全日程誰かが同乗し、どんな年代の人が、どこから、何人…と記録。車内では乗車された地域住民と実行メンバー、キャビックの運転手が和気あいあいと会話し、交流を深めます。
「今回、いただいた活動資金を運営費用に充てることはもちろんですが、もっと周知ができればと右京M-1(まちづくりワン)グランプリにエントリーしました。地域の方々のよろこびの声が一番うれしいですね」と村上会長。乗り込んでくる方にお話しを伺うと、「免許を返納して、コレがないと本当に不便。ずっと続けてほしい」「乗り心地もいい。遠くのバス停まで歩いて、混んだバスで立っていることを考えると、本当にありがたい」と、すでになくてはならない存在になっているようです。
村上会長「歩道を広くするとか、不便の解消の手段はいろいろあると思いますが、『すぐにできること』は限られています。いま困っている住民のために、まずはできることからと思っています」。
自分たちが住む地域を「共助」の心で豊かに守る。自治会魂ここにあり。この乗合タクシーは、「思いやり」を乗せて走っているんだなぁ。そう思うと、無機質なグレーの車体が温かく輝いているように見える・・・そんな取材でした。
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