右京が世界に誇るものといえば、「太秦の映画文化」。
先日最終回を迎えた、NHK朝の連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」でも、「京都の映画村」が舞台になっていたのをご覧になっていた方も多いのではないでしょうか?
映画会社がひしめき、100年近くにわたりさまざまな日本映画を送り出してきた太秦。そんな太秦に、2020年7月、映画文化の厚い歴史に触れることができる施設がオープンしたことを、皆様ご存じでしょうか?
あの映画の台本をアーカイブする東映太秦映画村「映画図書室」
2020年7月、右京屈指の人気スポット「東映太秦映画村」の中にオープンしたのが、「東映太秦映画村・映画図書室」。この「映画図書室」、なんと東映を含む様々な映画会社が撮影で実際に使用した数万点にものぼる当時の貴重な台本や、ポスター、宣伝資料などをアーカイブし、図書館で本を閲覧するように見ることができる施設なんです。いったい、どのようなところなのでしょうか?
嵐電「撮影所前駅」から少し歩いたところにある「東映京都撮影所」の門をくぐってすぐに「映画図書室」はあります。迎えてくれたのは、東映経営戦略部アーカイブ・スクワッドに所属して「映画図書室」を担当する石川一郎さん。「科捜研の女」などのドラマ監督も務めたプロの映像人です。
石川さんのご案内で建物に入ると、まず驚いたのは本棚に年代別に整理された様々な映画会社の台本でした。
「この「映画図書室」は、映画村に保管されていた資料や、撮影スタッフの方などから寄贈された貴重な資料を保管し、発信する施設です。一番古いもので昭和一桁、平成以降の映画の台本はほぼ全て収蔵されています。」(石川さん)
そんな石川さんが手に取って見せてくれたのは、東映が誇る時代劇や、「仁義なき戦い」の貴重な台本。そして、松竹の名作「男はつらいよ」、東宝アニメ「名探偵コナン」(劇場版)の台本もありました。公開まで「G作品」として伏せられていたあの「ゴジラ」第一作の台本も!
「東映、松竹、東宝やかつての大映などの映画会社は、お互いがどのような作品を手がけているのかを知るために、台本を会社同士で流通しあっていたようです。それゆえ、東映にもさまざまな映画会社の台本や資料が残されていたんです。」(石川さん)
「台本やポスター、プレス資料などは、基本的に撮影や公開時だけのためのものなので、撮影が終わったら仕舞われることが多かったそうです。ですが、「その貴重さや価値を発信できないか」ということで、京都大学の協力も得ながら、2020年に拠点として「映画図書室」がオープンしました。現在も、国内で撮影された映画の台本がここに納本されてくるので、実はこのスペースにあるのはほんの一部なんです。まだもっともっとあるんですよ」(石川さん)
これらの貴重な資料の数々は、事前に「映画図書室」まで申請することで、閲覧が可能になるということです。
- 生活の中に息づくキネマ
石川さんに、どのような方が「映画図書室」を利用するのか、尋ねてみました。
「研究者、シナリオライター志望の若者、地元の中学生や高校生も来ます。若い頃に見た映画を観に来るおじいちゃん、おばあちゃんもいますね。ときには、「子どものころに自分がエキストラで出演した映画の台本が見たい」と訪れる太秦の方もいますよ。地元の映画好きの方で、何度も通われている方もいますね。台本を見ながらインスピレーションを得て、絵を描いている方もいます」
「映画研究の拠点として、ここをめがけて海外から来られる方もいます。研究される方にとって、ここは資料の宝庫みたいです。この前は、海外から日本のアニメーション映画を研究している方も来てくれました」
「太秦は撮影所を中心に広まっていったまち。ご家庭のアルバムに、俳優さんと一緒に撮った写真がある方も多いですよね。家族で見た思い出の映画の台本やポスターも、ここで見ることができるかもしれません。だからこそ、ここ太秦に「映画図書室」がある意味があると思います」と石川さん。
石川さんのお話からは、「映画図書室」が太秦に住む方々の「映画の思い出」を思い出させてくれる様子が分かります。 引き続き後編では、石川さんはじめ、映画文化に携わる方々の思いについて伺っていきます!(後編へ続く!)
後編
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東映太秦映画村・映画図書室
■場所:東映太秦映画村・西隣(〒616-8586 京都市右京区太秦東蜂岡町10)
■開館時間:10:00〜16:00
■定休日:土・日・祝・年末年始
■収蔵資料
・映画ポスター:約3万点
・台本:約1万5千冊
・スチル写真:10万点以上
・映画関連書籍:約7千点
・映像ソフト:約5千点
・映画プレス資料:約1万点
※資料の閲覧には、事前予約が必要です。
詳しくは「東映太秦映画村・映画図書室」ホームページ(下記リンク)をご確認ください。